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プロボクシングの元日本チャンピオンで、現役時代から資格試験に挑戦していた人がいる。
日本フライ級王座に2度就き、昨年限りで引退した永田丈晶(じょうすけ)さん(28)。隙間時間を利用した独自の勉強法などを聞いた。
熊本市出身の永田さんは幼少時から空手に親しみ、熊本工高へ進学すると部活動でアマチュアボクシングを始めた。
「勉強は好きではなかった」といい、「空手の先輩が熊本工から警察官になっていて、自分もその道を考えていた」という。
3年の秋、最後の全国大会の国体で優勝。それまで全国的に無名だったが、優勝候補を次々に破って話題になった。進路はスポーツ推薦で中央大法学部へ。大学生活もボクシング中心だった。
卒業後は求人広告会社に就職した。ボクシングはやり切ったつもりだったが、高校時代のライバルたちがプロで活躍する姿に刺激を受けた。会社近くの協栄ジム(東京都新宿区)に入門した。
試合報酬だけで生活できるのは世界王者など一握り。もちろん仕事は続けた。職場に理解があり、残業のない部署にしてもらった。
社会人になり、本を読むようになった。世の中のことをもっと知るべきだと思ったからだ。その流れで「どんな仕事にも役に立つ」と、簿記の勉強を始めた。
仕事とボクシングの両立だけでも大変なのに、どうやって勉強時間を捻出したのか。
「家でするより、僕の場合は電車の中でした」と振り返る。
まずはテキストではなく、YouTubeで無料で見られる講義の動画を一通り見た。
試験の全体像をつかみ、「ひたすら問題集を解きました」。往復計約2時間の勉強を習慣化した。
高校時代、高校生としては難関の危険物取扱者甲種に合格した。その時に培った感覚が残っていた。
現役だった2022年4月、日商簿記2級に合格した。受験日は大阪でのプロ3戦目の12日後。合格には300時間以上の勉強が必要とされ、当時の合格率は約37%だった。
23年4月、プロ5戦目で日本フライ級王者になった。初防衛戦で敗れて陥落したが、2年後に王座を取り戻した。その次の試合で敗れ、「ここまでだな」と引退を決めた。
一発で相手を倒すようなパンチ力はなかったが、豊富なスタミナで後半に抜け出し、競り合いに強いボクサーだった。
ボクサーとしての日課があった。プロ入り後、年長の選手をまねしてノートをつけるようになった。
「思ったこと、トレーナーに言われたことを殴り書きして、頭の中を整理するんです。それが(計画・実行・評価・改善の)PDCAサイクルになっていたのかなと」
ボクシングにも勉強にも通じるのは、丁寧に向き合い、良い習慣を積み重ねていくことだった。
家族は妻と1歳7カ月の長男。引退後は会社を退職し、協栄ジムのトレーナーに転身した。転職するタイミングで「お金のことをきちんと学びたい」と、ファイナンシャルプランナー2級を取得した。2カ月弱、集中して勉強した。
夢は「まだまだ先の話ですけど、自分のジムを持ちたい」。必要と感じたことは勉強し、どんな相談にも乗れる指導者になりたいと思っている。
