「政治に大切なのは常識」福田康夫元首相が重んじた信条
論説委員・伊藤宏
福田康夫元首相の政権は、衆参両院で多数党が異なる「ねじれ国会」の影響で、わずか1年で終わった。ただ、その間に取り組んだ政策は、隣国との関係や民主主義を重んじたもので、今の時代にも通ずるメッセージを伝えている。
福田氏が政治家として最も力を注いだのは外交政策だった。衆院議員になったのは53歳と遅咲きだったが、当初から外交をライフワークと見定めていた。森、小泉両政権で官房長官を務めたときは、首相官邸から外交を主導し、「影の外相」とささやかれたこともある。
その福田氏が首相時代に取り組んだのが日中関係の改善だった。父赳夫元首相の秘書官を務めていた頃からの太いパイプを生かし、胡錦濤(フーチンタオ)国家主席(当時)の訪日を実現した。共同声明で「東シナ海を平和・協力・友好の海とする」と言及。ガス田の共同開発の方針も確認した。2008年のことだが、「日中関係は、この成果のうえに、いまだに何も構築されていない」(外務次官経験者)というほどだ。政界引退後も日中関係に深く関わった。
いま中国との関係は悪化し、政界のパイプも細っている。どうしたら良好な関係を保てるか。福田氏に聞くと「お互いに相手が嫌がることはしない」「言うべきことは率直に言う。ただし、相手のメンツがつぶれるようなやり方はしない」と話していた。
「政治に大切なのは常識」と常々語っていた福田氏らしいと思った。
福田氏の「常識」を感じた政策がある。首相在任中に取り組んだ消費者庁の設置だ。この発想のきっかけについて、福田氏は、当時相次いだ食品偽装事件に加え、自らも批判を浴びた年金記録問題もあげていた。
■財務省の公文書改ざん事件に…
この記事は
有料記事です。残り1298文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
この記事を書いた人
- 論説委員
- 外交、安全保障、国内政治
関連トピック・ジャンル
ジャンル
