ちばてつやさんの直筆はがき 終戦直後の博多の記憶「伝える励みに」
榎本瑞希
27日に訃報(ふほう)が伝えられた漫画家のちばてつやさんは、終戦後に旧満州(現中国東北部)から博多港に引き揚げた。今年8月まで連載を続けたエッセー漫画「ひねもすのたり日記」(小学館)でも引き揚げ体験を描いた。交流のあった人は「ちばさんの作品は、記憶を伝える励みになった」と悼んだ。
ちばさんは終戦直後、旧満州で父の友人だった中国人にかくまわれ、隠れて暮らす経験をした。屋根裏で息を潜めるなか、弟たちのために絵本をつくったことが漫画家としての「原点」だった、と作品のなかで回顧している。
終戦後、博多港には約1年5カ月にわたり、旧満州や朝鮮半島などから約139万人が引き揚げた。ちばさんも博多港に入り、焼け野原をいくつも通過して、千葉県にあった父の郷里に向かった。
引き揚げ体験者の高齢化が進むなか、福岡市内で出版社を営む遠藤薫さん(72)は、2011年から博多港の引き揚げ体験について証言や写真を収録した記録集の出版に携わる。ちばさんの著作でゆかりを知り、完成した記録集を送ったところ、礼状としてイラストが入った直筆のはがきが届いたという。
体験者の集会にちばさんの作品を持参すると、「この絵の通りだった」と共感が広がり、「伝える力の強さを感じた」。遠藤さんはビッグコミックで連載が続いていた「ひねもすのたり日記」を楽しみに読んでいたが、最近、休載の知らせがあり、心配していたという。
ちばさんからは、遠藤さんが引き揚げの記録集を送るたびに、直筆の礼状が届いた。その礼状は、戦後76年のタイミングでまとめた5冊目の記録集を送ったときに届いたものが、最後になっていた。
引き揚げを知る人が一人、また一人と亡くなり、6冊目となる記録集の編集は予定よりも遅れている。遠藤さんは「ちばさんにお届けしたかった」と肩を落とした。
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